「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」はストーリーそのもの以上に、カメラワークと魅せ方を楽しむことができる作品でした

アラサー男子の日常

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観ました。

正直な感想としては、脳味噌の奥のほうに対して非常に刺激的でした。

 

 

…たぶん、女性には特に。

どんな作品だった?

まず最初に言っておきますが、この作品はストーリーの奥深さやひねりを期待するような内容では決してございませぬ。ストーリーは良くも悪くも、恐らくみなさんが想像する内容から大きく反れている事はないのかなと。

ただし。

魅せ方とカメラワークは抜群

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なんかね、全体的に美しいんです。本当に。

ストーリー内容は特に寄り道するでもなく、どんどんと作品のメインテーマである「SM」に近づいていくのですが、主人公の2人が「そこ」に至るまでの数々の、言うなれば”焦らし”表現を、観る人がそれぞれの意思と想像力を最大限に発揮しつつ、楽しむ。この映画はきっとそんな作品なのではないかと(勝手に)思っております。

ちなみにこの作品の監督であるサム・テイラー=ジョンソンさんはイギリス出身の世界的に有名な芸術家としても活動されていらっしゃるとのことで。それを踏まえますと、この作品全体に漂う美しさにも、なるほどなぁと思うところも多いですね。聴覚(セリフ)と視覚(映像)の相乗効果によって、「頭の奥に隠し持った欲望のスイッチにビンビンと触れてくる」ような非常に刺激的な作品でした。日頃より妄想(?)が大好きな方には、きっとご満足いただける内容なのでないかなと。そしてこの映画のメインの題材は「SM」という若干刺激的なものではありましたが、内容としてはどちらかというと”SM”を連想させるシーンよりも”美しい”と感じさせられる描写が多く散りばめられておりました。

 

ちなみに、僕の場合は映画を見る前の前知識として「ウブな女子大生がSM趣味のイケメン大富豪にハマっていく物語」という、この作品のおおまかなあらすじは予め知っていたために、オープニングからのストーリー展開やセリフや映像などの、まさに全てが、まるで繊細で緻密な前戯のような内容に感じましたな。予め、主人公であるウブな女子大生アナとイケメン大富豪クリスチャンは、これから”そういう”関係になると分かってたからね。この作品には同名の原作本もあることですし、製作側もプロモーションの段階でそういった展開がある事については全く隠していないですしね。

もっと言うと、その展開を予め知っているからこそ、クリスチャンの細かな一言一言のセリフが、動きの一挙一動が、積もり積もってじわじわと響いてくるような感じがしました。

観る人の妄想力を刺激するカメラアングル

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中でも特に感じたのは、「接写」と「交差」の織り交ぜ方が絶妙だなと。例えば、アナの初登場シーンにてアナの瞳のどアップ映像の美しさに一瞬で心を奪われたのは、きっと僕だけではないはず。

さらにはカフェのシーンにて、アナの手とクリスチャンの手が不意に重なったと思いきや、遠近法にて撮影されているだけで実際は重なっていないシーン。エレベーターの内で2人の身体と身体が重なったように見えて実は重なってはいないシーン。更には、クリスチャンの秘密の部屋の鍵を初めて開ける際、2人の手元が触れるか触れないかのギリギリの形で交差する映像だけでさえ、何かを彷彿とさせられる印象が。

作品中盤以降にて2人の身体が重なる場面では、視線の動きに合わせてゆ…っくりと移動するうなよアングル、下になった上体から覆いかぶさった相手を見上げるようなアングル・逆に見下ろすアングル等々、実際の視線に非常に近い映像が非常に多くちりばめられており、ついつい観ている側が「あっ……ごめんなさい!見てしまってごめんなさい!」と思わず言いたくなる程の臨場感。

そして2人のスイッチがONになるきっかけとなるエレベーター内での突然の壁ドンキスシーンの瞬間には、映画館内の空気が一気にピーーーンと張り詰めたような感覚を感じたのは、きっと僕の気のせいではないかと思います。

この映画を観る際のスタンスとは?

個人的には、「ラブロマンス」×「エロス」の狭間を、ギリギリのバランスにて絶妙に織り交ぜた作品なのではないかと思います。

作品のメインテーマが「SM」ということからどうしても過激な内容を期待してしまいますが、決して過激すぎる内容ではありませんよね。むしろ美しくさえあるかなと。元々、日本での映画公開時はR15という規制も明確にされているように、予め、そこまで刺激的な内容ではないという認識は出来るはずですもんね。

この作品の良さとは生々しく直接的かつあからさまな表現を通して描くのではなく、上で挙げたような”観る人に何かを連想させる”ような想像力を刺激する部分である要素が非常に大きいのではないかなと。通常の映画のラブシーンでは映さないようなアングルを最大に活かし、たっぷりと時間を掛けて表現されるあの流れるようなカメラワークと温もりを感じる肌の質感には、劇場内にて思わず息を飲む方も多いのではないでしょうか。

 

ストーリー内容ではなく、「そこ」に至るまでの数々の刺激的かつ妖艶な魅せ方をお楽しみください。