前々からずっと気になっていて、Amazonでも入荷待ちだったこちらの本がようやく入荷しましたよ!とのことでしたので、早速購入して読んでみました。全部読んでみての感想を最初にお伝えしてしまうと、この本、理系出身の人にはたまらなく面白い本だと思いますよw
こちらの著者は、元NASAのロボット開発者であるランドール・マンローさんという方。マンローさんがNASAを引退後に始めた自身のwebマンガのサイトに寄せられた、一般の方々からの”ちょっとぶっ飛んだ”質問に対する超真剣な理系考察回答を、日本語訳してまとめた本です。もう、サブタイトルからおもろいでしょこんな本…w
例えば、サブタイトルにある「野球のボールを高速でなげたらどうなるか?」という質問を例に挙げてみますと、もちろん、実際にはこれの実現がほぼ不可能であるくらいに難しいという前提を予めしっかりと断った上で、もし、質問の内容が実現したとしたらどうなるか?をおもしろおかしく、そしてとてもとても丁寧に解説してくれております。
「野球の〜」の質問に対する回答の冒頭部にマンローさんのこんな一文があるのですが、
結論からすると、「いろいろなこと」が起こるというのが答だ。そして、すべては極めて短時間に起こり、バッターには(そしてピッチャーにも)気の毒な結果になる。
この「気の毒な」という部分の言葉使いというか物事の表現の印象に、マンローさんの優しくかつユーモアセンスと人間味が溢れ出すような性格が、とてもとても凝縮されている感じがするんですよね。そして回答の内容はもちろん、「ボールはピッチャーの手から離れた瞬間、何か摩訶不思議な力で光の速さ0.9c(cは光速度)まで加速するものとしよう」と、実際はベリーハードモードなんだけれども、”できる前提”として回答を進めて語られている所がまた、おもしろいのです。超真面目なその姿勢に、読み進めながらもクスッとしてしまう。(←これって理系人間だけなのかな?)
アメリカの人気コメディ番組の、「ビッグバン・セオリー」にちょっと近いニオイを感じるかもしれませぬね。
マンローさんの回答はとてもおもしろく勉強になるものばかりなのですが、そこに加えて更におもしろいのが、マンローさんの可愛らしい挿絵の数々と、思わずクスッとしてしまうジョークの部分。これが、クソ真面目な数値だらけの回答の中を読み進める際、頭の中のちょっとお口直しとして、めちゃくちゃ活きてくるんですよね…。例えば、こんな挿絵。
「ヨーダのフォースは何ワット?」の挿絵
ちなみにこのヨーダのフォースの回答以外にも、本書の随所でスターウォーズネタが登場します。アメリカではいかにスターウォーズが国民的作品として知れ渡っているかを感じますよね。あぁ、12月18日(金)が待ち遠しい。
そしてこの本を読みながら個人的に感じた感想は、世界で活躍する研究者さんや科学者さんの頭のなかって、きっと本当にこんな感じの夢がたくさん詰まっているんだろうなぁ…ということ。(たぶんですが)研究するときって、予め「こういう可能性はあるのかな?」やら「こういったものを実現するためには、どうすれば良いのかな?」などと、ちょっと先にうっすらと見える、”①ありえなくもない可能性”と”②目の前の現実”の間に存在する「???」を段々と取り去って近づけていくような、そんな作業の繰り返しなんだろうなぁと思うのですよね。そのためには、ちょっと馬鹿げた夢のような事をどんどんとシンプルに簡単に噛み砕いて数値化するなりなんなりして、今いる現実の所からの道筋をしっかりと描けるようにしなくてはならない。そうするときっと、何年か前には夢物語だった事がリアルになってくるんだと思いまする。
スマホの登場を予言していた!?とも言われる、ドラえもんの「おこのみボックス」みたいに、ね。
そう考えると、ドラえもんって研究者さんたちにとっては宝の山みたいなマンガなのかもね。
途方もない事を理論的に考えるのが好きな方には、ぜひオススメの本です。
追記
cakesでいくつかのエピソードの試し読みができました。
マンローさんのwebマンガサイト
what if?のサイト。本に収録されていない回答もたくさんあるので、興味を持った人は見てみるとおもしろいかも。ただし、英語だけどね。