2014年5月に岡田将生さん主演にて映画が公開されるとのことで、今更ながら読んでみました。
伊坂幸太郎さんの『オー!ファーザー』。
タイトルからしてなんだかハイテンション?っぽいこの作品。
内容は”伊坂さん流”の、青春まっただ中の高校生とその父親との微笑ましい交流を描いた作品でした。
あくまで
”伊坂さん流の”
ですw
内容はこんな感じ
ー父親が四人いる!?
高校生の由紀夫を守る四銃士は、ギャンブル好きに女好き、博学卓識、スポーツ万能。
個性溢れる父×4に囲まれ、息子が遭遇するは、事件、事件、事件―。知事選挙、不登校の野球部員、盗まれた鞄と心中の遺体。多声的な会話、思想、行動が一つの像を結ぶとき、思いもよらぬ物語が、あなたの眼前に姿を現す。
伊坂ワールド第一期を締め括る、面白さ400%の長篇小説!
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なるほど。タイトルのファーザーはそうゆうことだったんですね。
主人公の由紀夫くんの母は4股交際をキープしたまま由紀夫くんを産み、現在はその4人全員が父親として一家6人で暮らしているという設定。
すごい母だな。
伊坂さんの理想の女性(?)はこんな人なのでしょうかw
父親が4人という、もうこのぶっとんだ設定からして伊坂さんワールドですもんね。この設定をどう転がしてくれるのか!?と、読み始めからワクワクな作品でした。
読んでみての感想
一言で感想を表すと、
こんな父親に、自分もなりたいなぁ。
と、素直に思えた作品でした。
実際にいたらけっこう問題ありなのかもしれないけどw
でも自分の子どもと友達みたいに付き合える父親って、なんかいいですよね〜
(たぶん)伊坂さんが伝えたかったメッセージ
「一人よりも二人、二人よりも四人の方が上手くいくことって、世の中に意外とたくさんあるよ」
というようなメッセージを描いたのではないかなぁと思います。
この作品には超個性の溢れる父親が4人登場するんですけど、その4人の父親全員が超変わり者なんですよね。
しかしその4人はただの変わり者ではなく、言い換えればそれぞれが何らかの分野の超一流。
ギャンブルのプロにスポーツのプロ、学問のプロに女性の扱いのプロ。
そんな4人が一致団結して何かに一直線になったら、どうなると思います?
もう、無敵じゃね??
小説の中では由紀夫が危機の際に父親4人がどうやって立ち向かうのか?が何度も描かれていますが、僕はそのシーンのたびにワクワクさせられました。こうゆう、オーシャンズ11みたいな、アベンジャーズみたいな、それぞれだと問題児なんだけどもチームになると最強!みたいな設定って大好きなんですよねぇ。
この作品は言い換えれば、「もし日本の高校生の父親がアベンジャーズだったら〜」っていうタイトルが合いそうですw
伊坂さんらしい伏線回収コンボ
伊坂さんファンは、おそらくこれを一番の楽しみに伊坂さん作品を読むという方も多いと思いますが、本作品でもそれは健在でした。ラスト数十ページの流れは次のページをめくる手が止まりませんでしたなぁ。ジェットコースターのラストを一気に駆け抜けて行くような、あの感じ!
ごちそうさまです。
でもこれは個人的な意見かもしれませんが、他の伊坂さん作品に比べると伏線の張り方がちょっと荒かったかな…?という気もしました。「由紀夫くん救出のために、一般人参加型のテレビのクイズ番組に出る!」というのはやや強引だったようなw
しかしラストの流れは、作品冒頭から貯めに溜めた様々な伏線描写を一気に解放するような読んでいてニヤニヤのラストでしたので、細かいことは気にしない。
読者が最も知りたい部分を敢えて描かない
そんでこれも伊坂さん作品でよくある事ですが、今回では誰もが最も知りたかったであろう、4人の個性豊かな男と4股をし更には4人と結婚してしまう程の女性である由紀夫の母親について、
全く描写が無い
んですよね。さすが。
「モダンタイムズ」を読んだ後にもこんな感じを持ったんですけど、”世の中はそうなるように出来ている”というような、はたまた、”答えはあなたの中にすでにあるだろうから、それぞれ妄想して楽しんでみてね”と伊坂さんにそっと悟されているかのような、明確な描写が無くモヤモヤなハズなのですが不思議と嫌ではない『敢えて核心を描かない』部分もヤラレたなという感じ。
人間って不思議なもので、答えが分からないものに程、答えを求めたがるものなんですよね。
「1+1=は絶対に1!」と教える、日本の教育制度の影響なのかもしれないけど。
ちなみに
「オー!ファーザー 母親」
でググってみたら44,200件もヒットしました。
「オー!ファーザー 感想」
だと42,700件。
作品の感想よりも母親についての議論の方がネット上で盛り上がってたみたいですねw
ここまで全て計算の上での母親描写だとしたら、さすがです。
気になったフレーズ集
伊坂さん作品ってどこか哲学ちっくな語り口で、小説なんですけど読んでいてふと考えさせられるセリフが多いんですよね。
そこで、この作品の中で個人的に響いたセリフをいくつかご紹介。
「おまえは今まで何十年か生きてきて、友人でも教師でもいいから、この人は優れている、と思える人間に会ったか?」
P,303
由紀夫が大学教授である父親・悟とともに、赤羽の選挙事務所を訪ねた際に悟が言ったセリフ。
思わず「ほほーーー。」考えさせられてしまいました。
悟はこの後、「優れた人間なんてそうそういないってことだよ。国会議員だって県知事だって、選挙に立候補する人間の大半は俺たち同様の普通の人間なのかもしれない。」と続けていましたが、前日の世界でも、すごいと言われている人って確かにみんなそんなもんなのかもな、と思いました。
仲の良い友達や気が合う教師や上司はいるものの、心の底からその人の全てを尊敬できる人って意外と少なかったりしません?どんな人にだって、”あの人の◯◯は素晴らしいけど、□□は良くないと思う”なんていう、長短があるものですよね。
由紀夫の父親4人もそれぞれ長所があり短所がありの4人ですが、その4人が揃うことで1+1+1+1が5にも6にもなるんだよ〜という、この作品全体のメッセージにも繋がるようなフレーズでした。
「人間は恥をかくと、むっとするようにできている」
P,312
これも悟のセリフでした。
家族5人での夕食時、中学校の教師である勲が態度の良くない自分のクラスの生徒に対して、生徒の自尊心をなるべく傷つけずにどのように対処すべきか?を皆で議論していた際の言葉。
うーむ。確かに。
中には「バカにされる事は慣れているから平気」っていういう人もいるかもしれませんが、それは慣れているんじゃなくて気にならないレベルの言われ方だからなんだろうなと思う。あとは、自分の事はいくら言われても平気だけど、友人や他人の事を悪く言われると耐えられないっていう人もいますしね。
そう考えると、人間って不思議ですよね〜なんで恥をかくとむっとしてしまうんだろう。
ちなみにこの後の悟のセリフでは「人間の動力の一つは、自己顕示欲だ」と続くんですが、確かにこれがないと文化や科学ってここまで発展していなかったかもしれないですね。STAP細胞を作ったとしてもそれを発表せず身内だけで細々と利用していれば、ここまで大事にはならなかったかもしれないし。
世の中、いろんな事がバランス良く作られているもんですなぁ。
ちなみに勲とその生徒との対立のラストにも、この4人の父親の絶妙なやりとりが出てきますのでお楽しみに。
まとめ
さらっと気負わず読める「伊坂さん流ファミリーコメディー」的な作品でした。
映画公開前に、予習がてらいかかでしょうか♪
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